2024年10月7日月曜日

株式会社CULTA

挑戦すべきフロンティアは「食」にあり

農作物の高速品種改良で気候変動を克服
 東京大学発の農業スタートアップ、株式会社CALTA(創業:2021年、本社:東京、以下同社)が挑む新天地は、同社が有する高速育種技術により出来高も品質も気候変動に左右されない農業を構築することだそうです。
 これまでの農業は、その土地と気候にあう作物を作ることでしたが、気候の温暖化により収穫量や品質に影響が出るようになっているのは、最近のメディアでも報道されるようになっています。この課題を解決するためには、同社は農業先端技術だけでなく農家と消費者を結ぶ線とその広がりによる面をも考慮にいれて活動しているようです。
  同社が現在注力している「イチゴ」ですが、通常10年かかるなか、同社はその高速育種技術により僅か2年で、輸出に適した新品種を開発、長距離輸送でも実が崩れない棚持ち度合いや味など、従来品種に比べ、大幅に優れた品種を生み出したとのこと。元来日本のイチゴは世界的にも高いブランド力を誇っていることもあり、同社は栽培地の気候に合うように自社開発した新種のイチゴをマレーシアで自社生産に踏み切ったことから早速隣国シンガポールから協業依頼があったそうです。同社は、今後、APAC各国、更には米州や欧州・アフリカでの展開を考えているとのこと。
 協業にも様々な形があると思いますが、同社の考える農家と消費者を繋ぐというEnd-to-Endのサプライチェーンを前提とした大きな絵図においては、地球上の様々な地域を面でとらえて、それぞれの地域に適した作物を消費者に届ける仕組みづくりも必要となると思います。その大きな展望の中でそのコアとなる同社の高速育種技術とそれによって生み出される新品種の作物は知的財産としてしっかりと保護されていることは必須条件でしょう。着実に、しかし高速で展開されている同社の農業変革活動に敬意を表すると共に益々の発展を祈念しております。(AS)
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Made of Air GmbH

炭素削減素材

工業社会の脱炭素化に貢献
 Made of Air社(本社:ドイツベルリン、2015年創業、以下同社)は、創業以来画期的カーボンネガティブな工業用充填剤の開発・製造に携わっているそうです。同社は、バイオ廃棄物を人工的にバイオカーボン(本稿では、少し狭義になりますが、バイオカーボンを以下バイオ炭と呼びます)に変えて、工業製品に利用可能な材料として提供するそうです。「同社は、同社製素材が使用されている製品使用者を、単なる資源の消費者から炭素削減の積極的な担い手へと変えると共に、比類のない耐久性と長期的有効性を提供する」という主旨の同社のキャッチフレーズが印象的です。
 バイオ炭とは、バイオマス(生物由来の有機性資源)を、極めて酸素濃度の低い環境下で加熱して得られる物質で、木炭や竹炭が良い例です。枯れ木や廃棄木材を焼却したり、あるいは自然界に放置すればいずれは細菌などにより分解され、いずれの場合も炭素はCO2として放出されてしまいますが、バイオ炭を使うと二酸化炭素を固定化できる点に着目し、バイオ炭をプラスティックなどの工業製品に混入させるための独自技術を開発したそうです。
  理論的試算値だと思いますが、同社の技術を使い現在世界に存在するプラスティックを僅か10%同社技術によるバイオ炭材で入れ替えた場合、2060年までに年間3.3Gtonの二酸化炭素が除去されるそうです。Earth System Science Dataによると、2022年時点の世界全体のCO2排出量が約40Gton, 自然界の吸収量が7Gton弱と推定されるそうです。2060年における排出量と吸収量は分かりませんが、この2022年の推定値と比べてみると、同社が試算する2060年における同社バイオ炭材料によるCO2吸収量3.3Gtonという数値が有する潜在的なインパクトの大きさが見えてきます。
 同社のバイオ炭材料技術の詳細は、ウェブサイトからでは全く分かりませんが、可塑性のあるプラスティック加工において同社バイオ炭材料を混入させる工程とその結果(つまり最終製品)において、CO2の大幅削減効果以外には全く人体、自然界に悪影響を及ぼすようなものを排出しないのだろう、そしてその最終製品が廃棄される時にも新たな二酸化炭素排出量を増やすことにならないだろうことを信じつつ、同社の急速なる発展と成功を念じております。(AS)
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2024年9月23日月曜日

ライフイズテック株式会社

世界を変える力を、すべての人に

中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす
 ここに記す文章のヘッドラインと小見出しの言葉は夫々、ライフイズテック株式会社(2010年創業、本社:東京、以下同社)が同社ウェブサイトで同社の「抱負」と「使命」を語る部分の見出しです。2010年に僅か3名で立ち上げた同社は、社会の様々な課題を解決するための有力な道具の一つであるICT(AIも含む)を一人でも多くの人に身に着けてもらおうと、先ずは10代の若者たちを中心に、様々な学習機会や道具を提供してきているそうです。
 その手法は単なるプログラミングだけではなく、ICT(AIを含むディジタルを基本とした情報通信技術)を活用するとどのようなことが出来るのか考えさせ、身近な社会の課題を解決するための有力な道具であるという気づきを呼び覚ますような仕組みを中心に据えているように感じます。
 若者に限らずあらゆる年代の人々にとって今やスマホは必需品となりつつありますが、その利用はLINEなどのディジタルコミュニケーション、SNS、情報検索、通話が大半を占めているのだろうと推察され、ICTの持つ力の一側面に限られているのだと思います。他方、ICTの持つ力の全貌は計り知れぬほど大きく、今もそしてこれからも継続的に・・・時には急激に、我々の住む社会、世界を変化させ続ける、いわば社会の基盤を成す重要インフラの一角を占めており、又、誰でもが利用可能な道具の要であることもその一面と言えるでしょう。ICTで社会を、ひいては「世界を変える力」という同社のスローガンは決して大袈裟なことではありません。このICTを正しく理解し正しく使う、そしてICTで社会を、ひいては「世界を変える力」とするためには、ある程度ICTをきちんと学ぶ必要性があります。同社のウェブサイトによれば、同社のディジタル教育の受益者数が200万人をこえているとのことです。ディジタル教育が他の先進国に比べてやや遅れていると言われる日本にあって延べ200万人超という数字は大変心強いですね。
 いかに便利で優れた技術や道具でも、使い方によっては社会に害を及ぼす負の可能性を秘めていますがICTも例外ではありません。ICTを正しく使い、日本発の「やさしい世界」「やさしい社会」を創り上げる力を持つ人材を沢山育て頂きたいと思います。ライフイズテック社の益々のご活躍とご発展を祈ります。(AS)
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2024年9月16日月曜日

有限会社アグリマインド

スマート化で変わる農業のかたち

収穫量は7倍、人手は半分
  日照時間が日本一長いと言われる山梨県北斗市に2014年アジア初となるセミクローズド農業用温室が導入され初年度より当時では考えられなかったトマトの単位生産量が700t/haを超える驚異的な記録となったそうです。その温室を所有・運営するのが有限会社アグリマインド(2006年創業、本社:北斗市、以下同社)です。
 同社のセミクローズド型温室は、3ヘクタールの敷地に建てられた2ヘクタールのガラスハウスで、空気を外に向けて排出する構造で、病害虫の進入をシャットアウトした最新ハウスだそうです。これにより、同社の作物は、低農薬を実現できている由。
 同社ウェブサイトによると、「新しい農業のカタチを作るべく、その結果に甘んじることなく今なお新しいチャレンジを行っています」とあり、情報通信やAIなどの現代の先進技術を駆使し、温度管理、給水、肥料、栽培管理、収穫、梱包、出荷など様々な領域における作業を簡素化し高生産性を実現できているそうです。
 同社は大手食品メーカと契約栽培を結んでおり、高リコピンを世界最高水準の設備と技術で、生産。オートメーションによる徹底管理によって高収量を実現できているそうです。就農人口の減少が言われている日本にあって、可能な限り自動化を果たしつつ、環境負荷をも減らしていくことが求められている中、新しいスタイルの農業を掲げる同社の益々のご活躍・発展を祈念しています。(AS)
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2024年9月9日月曜日

長湯温泉アルベルゴ・ディフーゾ協会

 過疎化を逆手に温泉地を再興する

地域全体を宿泊施設に
 
大分県竹田市直入町にある長湯温泉(以下同温泉)は、日本一、世界でもトップレベルにある炭酸温泉地域だそうで、同温泉のウェブサイトを覗くと、「長湯温泉は、血行を促進するため、神経痛や心臓病に効き、また、飲めば胃腸の働きを活発にするので、胃腸病や便秘に効果があると言われています」とあります。しかしながら、同温泉地域は、過疎化が進行中で放置すれば折角の名湯さえも宝の持ち腐れになりかねない状況であったようです。
 過疎化が進めば空き家も増えますが、同温泉地域では「空き家や古い建物を宿泊施設や飲食店などとして再利用することで地域全体で観光客や移住者を迎え入れる」大胆な試みがPDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルに沿いつつ今も進行中のようです。又同温泉地域には、クアパーク長湯(坂茂設計)、御前湯(象設計集団)、ラムネ温泉館(藤森照信氏)など名のある建築家の設計による建築物も配置されており、同温泉地域を訪れる人々の関心を高めているそうです。
 上述のような、様々な取り組みを包含する形で、2023年5月に同温泉地域にイタリアの観光モデル「アルベルゴ・ディフーゾ」を導入する取り組みを開始、街中や集落の古民家を客室に見立て,一帯で宿泊経営を行う分散型宿泊施設の考え方に基づく活動を広めようと、2023年5月に「長湯温泉アルベルゴ・ディフーゾ協会」(本部:大分県竹田市直入町、以下同協会)が発足。イタリア語で,アルベルゴは「宿泊施設」,ディフーゾは「分散」の意味を持つそうで、空き家を宿泊施設として再生し,レセプション(フロントやコンシェルジュ機能をもつ施設)を中心とした街中に,レストランやバー機能を有しており、少子高齢化による空き家問題の解決や,宿泊者が回遊することによる活性化や,交流の創出が期待されているとのことです。
 同協会会長首藤勝次氏は、直入町役場職員、大分県議会議員、大分県竹田市長を三期務められるなど地域行政に精通、そればかりか首藤家の家業である同温泉地域中軸の旅館経営、海外との交流を通じて得られる多様な視点など、同地域の課題とその解決へ向けた取り組みに必要なあらゆる知見を備えておられるご様子。正に、首藤氏なればこそ、深い歴史に包まれつつも、ともすれば衰退の可能性のあった同温泉地域の再興、そして日本国内でもユニークな温泉地域に変貌が成し遂げられたのだと思います。同地域の益々のご発展を祈念致します。(AS)
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鶴頸種苗流通プロモーション

伝統野菜の種を未来につなげる

在来作物の種を全国に流通させることで多様な種を守る
 鶴頸種苗流通プロモーション(2018年創業、本社:東京、以下同社)、その代表者小林宙氏は、筆者がこの文章を書いている2024年9月現在、現役の大学生、つまり同社は、彼が中学生の最後の時期に起業した会社です。
 日本の伝統野菜の種作りが徐々に失われつつある現代の状況に危惧感を抱き、日本の各地域独特の伝統的な野菜の種をその地域だけに留めおかずに全国に流通させることが出来れば、自ずと広域でその種が保存、利用されることになり未来につないでいくことが出来ると気づき起業したとのことです。とても地味な活動ですが、素晴らしい着想です。
  筆者は、小林氏にお会いしたことはありませんが、様々なメディアのインタビュー記事や彼が著した書籍「タネの未来: 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ」(2019年9月、家の光協会出版)から、「伝統野菜を未来に繋げていく」という彼の高い志がひしひしと伝わってきます。
 多様な伝統野菜の種を失わずに未来へ繋げていくこと、それは言うに易く行うに難く、当面は損得抜きで継続して行かなければならないことかもしれません。しかし、いずれは、ある程度の利益を出し同士を増やし同社の活動の未来への継続性が確実にされるのだと思います。小林氏の益々のご活躍と未来へ向けた発展的継続を心より祈っております。(AS)
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2024年8月19日月曜日

株式会社高橋工房

今に生きる伝統芸術

浮世絵版画の世界

日本の印刷技術の原点となっているといわれる浮世絵版画ですが、安政年間から続いている江戸木版画を手掛けている工房があります。株式会社高橋工房(創業:安政年間1856年~1860年、本社:東京、以下同社)が手掛ける江戸木版画は、江戸時代から続く技法をそのまま生かしつつ葛飾北斎など当時人気を博した浮世絵の復刻版画のみならず顧客の要望に応えて現代版浮世絵木版画の提供も行う版元です。
 浮世絵版画が出来るまでのプロセスを、少々乱暴ですが、簡単に言い表してみましょう。先ず、版元の統括の下、絵師、彫師、摺師が揃って初めて作品が出来上がります。版元を今風に言えば出版総合企画会社、版元の指示に基づき絵師が原画(版下絵)を制作、その原画を彫師が版木に彫り、それを摺師が色付けをしながら和紙に転写していく作業で版画が完成します。そして浮世絵版画作りに絶対欠かせない版板、和紙、絵の具などの材料調達先との密接な関係維持も版元の仕事であることを忘れてはなりません。160年,余り前、創業時の同社は、摺師であったそうですが今は版元と摺師の仕事を兼ねているそうです。
 現代では、何事もIT抜きに語れなくなりつつあり、絵画も高精細のディジタル画像を壁にかけて楽しむこともできます。浮世絵も例外ではなく、最近ではNTT東日本もNTT Art Technologyを設立、伝統美術を高精細なディジタル画像をオンラインで提供するサービスを行っていますね。ディジタル化された映像は経時変化による品質劣化が無く又オンラインで多くの人々が鑑賞できます。しかし、実際の和紙に刷り込まれた浮世絵版画は和紙の裏にも染み入る趣や見る角度による微妙な変化などを含む本物の味わいがあり、現時点ではディジタル画像が敵うものではないと思います。
 もう一つ、重要なことは長年にわたり同社が継承している伝統的な作法(さくほう)は、正にものづくりの原点。つまり、版元、絵師,彫師、摺師の連携は、互いの作業を十二分に分かっていないと精緻な逸品はできません。自分の作業の前と後の作業工程を念頭に置くこと、言い換えると自分の作業を終える時に、次の工程の人が直ぐ取り掛かれるように十分配慮した自分の作業物を、次の工程に渡していくことが肝要です。このことはモノづくりの要諦であり日本のものづくり品質が高く評価されてきた原点でもあります。少しくどい言い回しになりました。 既に世界的に認知され高い評価を得ている浮世絵版画ですが、江戸木版画を通じて柔らかで趣があり人の心を癒してくれる浮世絵版画を、世界の隅々まで広めて頂きたいと思います。同社の益々のご活躍を祈ります。(AS)
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