2024年11月25日月曜日

日本熱源システム株式会社

地球温暖化問題に挑み続ける

自然冷媒活用
 日本熱源システム株式会社(創業:1987年本社:東京、以下同社)は、地球温暖化対策として自然冷媒(CO2やアンモニア)を用いた産業用冷凍機やヒートポンプの開発・製造・販売を行っているそうです。

かつては、フロンが冷媒として使用されていましたが、フロンガスが地球を覆うオゾン層を破壊することが分かり国際的に規制する動きが強まりました。1985年のウィーン議定書、1987年のモントリオール議定書、2016年のキガリ改正などを経て、先進国では2009年に全廃したフロンガス(CFC)に加えて、代替フロンの一種HCFCをも2020年までに全廃、更なる代替フロンHFCも温暖化への影響が大きいことから2036年までに対2011-2013年比で85%まで削減が求められています。このような国際的な動きを背景に先駆けて同社では、2016年に自然冷媒の一つであるCO2冷媒冷凍機「スーパーグリーン」を開発し産業分野での納入実績を積み上げてきたそうです。

同社ウェブサイトには、次なる挑戦として”熱ネットワーク化”を掲げて次のような文章が記されています。

「私たち日本熱源システムが、次なる目標として据えるのが、熱のネットワーク化です。CO2冷凍機で冷却するだけでなく、これまで大気に放出していた排熱を利用して、温水を作ったり、冷凍冷蔵倉庫内のクーラの除霜に用いるブラインを昇温したり、荷捌き室を除湿するデシカント空調機の熱源に利用するシステムの導入を進めています。加えて、化石燃料を燃焼させるボイラーに代わる装置として、80℃以上の温水を生成出来る、アンモニア冷媒のヒートポンプの導入を進めていきます。熱のネットワーク化とは、冷凍機やヒートポンプを組み合わせて、余っている熱を相互に融通したり再利用したりすることで、更なる省エネを図っていくシステムです。これによって、工場などの事業所単位、地域熱供給などで大きなメリットを生み出し、本当の意味でのSDG‘sや持続可能な社会の構築が可能になります。」

冷やす、暖める、捨てていた熱を再利用する、これらの組み合わせを最適化することで地球環境への影響を最小化し、小さなエネルギーで大きな力を生み出す社会への貢献、地球温暖化問題への挑戦を続けている同社の姿勢に敬意を表します。同社の益々のご活躍を祈念しております。(AS)
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2024年11月18日月曜日

株式会社里山エンジニアリング

木から電池をつくる

里山問題の解決と持続可能な社会の実現
 21世紀に入り、我が国はもとより世界的に持続可能な社会の実現が喫緊の課題となっています。株式会社里山エンジニアリング(創業:2022年、本社:宮城県、以下同社)は、その答えの一つが日本の伝統と先端技術の融合にあるとして、江戸時代の循環社会の精神を受け継ぎ、最先端の工学と里山の自然資源を組み合わせることで、新たな循環型社会の礎を築いていくことを目指しているそうです。

現時点に於ける具体的な活動として、我が国の約4割を占める里山の木材や微生物などの資源を活用し、林業の再興や伝統技術の継承を促進するそうです。地域ごとの独特な技術を再評価し、持続可能で独自のモノづくり大国、日本の再興を目指すとのこと。また、地域との連携を深め、ものづくりの場を解放し、地域住民の創作の機会や技術リテラシーの向上に貢献して行くそうです。

同社活動の中で、当サイトANSListsが注目したのは同社によるウッドバッテリーの開発です。近年、里山の手入れ不足が深刻化し、二酸化炭素吸収量が減少、生物多様性の低下、ナラ枯れなどの問題が発生しています。そしてまた、従来、熱エネルギー源として利用されていた里山薪炭林を現代の暮らしの中で積極的に活用する機会も減少しつつあります。そこで、里山の森林維持と電気エネルギーの利活用を両立させるという目的で、薪炭林を蓄電池の材料として活用するウッドバッテリーが開発されたそうです。ウッドバッテリーは、東北大学で長年研究されてきた「両有機レドックス電池」の技術を基盤としているとのこと。文字通り木材を原材料として使用する蓄電池、その容量は鉛電池と同等、1,000回の充放電後も95%の容量を保持、高速充電を可能とし、電極に金属など枯渇しつつあるような他の自然資源を使用しないため環境負荷が低く循環型社会に適していると言えるようです。他方、里山資源の適正な管理を促進することにより、地域林業の再興、萌芽更新による木々の再生、生物多様性の回復、CO2吸収量の増加、中山間地域における雇用の創出、小規模エネルギー分散社会への貢献、などの効果を生み出せそうです。
 ウッドバッテリーは、「安価で・安全な・環境に優しい」蓄電池として、将来的には地域の木材を活用した地産地消型のエネルギーシステムを構築する可能性を秘めていると言えそうで、里山問題の解決と持続可能な社会の実現に貢献する可能性を秘めた革新的な技術ですね。 今後の研究開発の進展と普及促進に期待が高まります。同社には大きく飛躍して頂きたいとの思いをこめて、今後のご活躍を心より祈念致しております。(AS)
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株式会社アドダイス

AIがもたらす「やさしい」社会

AIで社会課題の解決に挑む
 株式会社アドダイス(創業:2005年、本社:東京、以下同社)は、「AI技術を用いて社会課題の解決に取り組む企業」と書いてしまうと堅いイメージとなりますが、同社社長伊藤氏がウェブサイトで述べておられる「安心安全な社会を実現するために、環境を自律制御するAI技術」は、とりもなおさずものづくりにやさしく、環境にやさしく、人にもやさしい社会を支えるAI技術と理解しました。

具体的なサービスとして、現在同社は、次の三つのソリューションを提供しています。

  1. HORUS AI: 製造工程における検査、検品、監視など、従来人手に頼っていた目視判断業務を、特別なプログラムを作成することなくAIで代替することで、業務効率化・省人化を実現。
  2. SEE GAUGE: 省エネAI。空調の快適性を維持しながら、AIによる高度な制御でエネルギーコスト削減とCO2排出量削減に貢献。
  3. ResQ AI: こころとからだの健康を見守るヘルスケアAI。スマートウォッチで取得したバイタルデータをAIが分析し、「未病」状態を早期に検知。健康状態の悪化を予防し、医療費削減にも貢献。

三つの中で我々ANSListsティームが特に注目したのは、人の命を救う観点から潜在的に高い社会貢献度が期待されるサービスResQ AIです。社会貢献へ向けた実証実験例として、同社が参加するJICAの支援プログラム(ResQ AI、JICAおよび米州開発銀行グループの支援を受け、ボリビアで妊産婦の健康管理に活用)や同社と国内のバス会社、損保会社が共同で居眠り運転を防止するAIプラットフォームを構築するための試験プロジェクトなどがあります。

これらのサービスの特徴はSoLoMoNという同社独自開発のAIシステムが要となっているそうで、そのサービスをSaaSとして、同社が提供するサーバーに接続さえすれば直ぐにでもサービスを受けられるところにあるとのこと。しかもAIといえば必須と思われているデーター解析専門家も不要で操作性も簡単だそうです。

同社は、既存のAIソリューションの更なる進化・発展に加え、同社ウェブ上に公開されている最新のプレスリリースやCEOブログからは、同社の積極的な事業展開の様子が伺えます。同社の益々のご活躍とご発展を祈念します。(AS)
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2024年10月28日月曜日

Qolo株式会社

立ち上がることの素晴らしさ

立ち上り移動できる電動車椅子
 茨城県つくば市に本拠を構えるQolo株式会社(創業:2021年、以下同社)は筑波大学発のスタートアップ企業。同社代表取締役・開発責任者である江口さんが、車いすで生活する人のための次世代移動手段を開発する動機となったのが、江口さんのお婆様が転倒し歩けなくなり車椅子を使うようになった様子をみて、歩けなくなった人たちを肉体的にも精神的にも支える道具を開発したいとの思いを募らせたことにあるそうです。
 健常者には電動スクーターや電動キックボードなど立ったまま所定の速度で移動する手段として様々な製品が用意されています。しかし車椅子に乗っている人がその車椅子上で立つことが出来るような仕組みのものはこれまでありませんでした。車椅子上で立ち上がりそのまま移動ができるということは、座ったまま車椅子で移動しなければならない人の動きを大きく変えることになります。例えば立っている人との対話も同じ高さの視線に合わせて話すことが出来る、あるいは台所で料理をする場合、水道蛇口やレンジ、その他調理具にも楽に手を伸ばすことが出来るようになります。
 製品づくりのためには、車椅子上で立ち上がるということ、立った状態で前のめりになっても転倒しないこと、小回りを可能とすることなど難易度の高い課題を乗り越えていかなけれなりません。どの様にそれらの課題を解決しているのか、映像で見て頂くと分かりやすいと思います。同社ウェブサイトにあるANNNewsの録画版YoutubeビデオのURLを下に貼り付けておきますのでご覧ください。尚、このビデオの字幕で触れているオムニホイールは、同社製品の前輪に採用されており、前後に回転するだけでなくその場で横に動くことを可能にしています。これにより車椅子の小回りあるいは止まっている場所における回転を実現できます。このオムニホイールには、以前このANSListsでも取り上げたWHILL株式会社が開発したものが使用されているそうです。
 これまで車椅子を操りながら座ったままで移動できても立ち上がることは出来なかった方々が、必要に応じて立ち上がることが出来るというのは本当に素晴らしいことだと思います。同社製品が一般販売されるようになるのは再来年(2026年)だそうですが、沢山の方々がQolo製品の市販を待ち望んでおられるのではないでしょうか。同社の益々のご活躍とご発展を祈念しております。(AS)
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株式会社百(MoMo Inc.)

生き方を変えてみる

ベーシックインフラの地産地消100%を目指して
 宮城県川崎町を本拠地とする株式会社百(以下同社)は、生きるために最低限必要な食料・水とエネルギーを「ベーシックインフラ」と定義し、その地産地消率100%を目指して2020年に創業。先ずは、生活の場を確保するため「2019年1月15日に15163㎡の杉林を手に入れ、『百のやど』を建設するための土地整備を開始しました。2019-2021年にかけて、建設に必要な本数の杉を自伐し、伝統構法大工が敷地内で製材・刻みを行い」、続いて宿泊施設を完成させ、来年2025年には一定規模のコミュニティを形成するべく仲間を増やしつつあるとのことです。
 ベーシックインフラ整備の根幹、食料地産においては、極力農薬などを使わず気候など土地柄に合わせた農作物づくりや養鶏、猪猟などをコミュニティで管理しつつ行い、エネルギー源は発電用ダムなどを作らず小水力発電や太陽光による発電で賄うそうです。余剰電力を使用して水素生成を行い燃料電池として蓄え電力自給率を向上させるとのこと。更に、放置されている里山の広葉樹林を自伐市薪ストーブやボイラーの熱源として利用し、生ごみを細菌で分解して得られるメタンガスの利用や地熱、太陽熱など様々な熱源を活用するそうです。
 現代人はこれまでとかく「はたらく」(お金を稼ぐ)ことに多くの時間を割き、得られたお金で「くらし」て、余ったお金で「あそぶ」というお金に縛られた生活をしてきましたが、「はたらく」、「くらす」、「あそぶ」の三つのバランスの取れた生き方があるはずであると考えて、同社はこれをベーシックインフラ型社会と名付けて新たなライフスタイルを提案しています。川崎町に移住してコミュニティに全面的に参加するもよし、従来どおり都会で「はたらく」手段をとりながら、コミュニティに参加するのもよしとするとのこと。
 同社が提案するベーシックインフラ型社会においては、現代技術の粋を利活用するエネルギー地産があり、食料地産においても極力農薬に依存せずにコミュニティの力を合わせて効率の良い方法を考える姿勢があると感じます。また、同社ウェブサイトには資本主義を前提としている旨の記述があることを銘記しておきたいと思います。最後に、現時点の同社事業収入は、上述の宿泊施設「百の宿」の運営、「林業」、「企業研修」にあるとのことを付記しておきます。ともあれ、現代技術を活用しつつ「はたらく」、「くらす」、「あそぶ」の三つのバランスがとれるライフスタイルを提案する同社の持続的発展を心より祈念します。(AS)
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2024年10月21日月曜日

ViXion株式会社(ヴィクシオン)

 テクノロジーで人生の選択肢を拡げる

視力に悩む人々の手に最速で届ける
 2021年に光学機器・ガラス製品製造における大手企業HOYA株式会社からスピンアウトして独立したスタートアップ企業ViXion株式会社(本社:東京、以下同社)は、“テクノロジーで人生の選択肢を拡げる”を目的とし、見え方の能力拡張を実現する製品とと解決策を提供しているそうです。
 同社の最新製品ViXion01Sは、目の酷使や加齢に伴う見え方の課題解決を支援するそうですが、医療機器ではないため、アイウェアとして開発されたそうです。この製品の特長は、自動焦点機能を搭載している点で、かけた後、左右にあるつまみで調節すれば、それ以降自動でピントが合うとのこと。
 同社製品の源は、HOYA株式会社の一部門で開発された暗所視支援眼鏡にあるそうですが、その製品を一層進化させて弱視の人だけではなく、「見え方のわずらわしさ」を感じているすべての人にそのわずらわしさから解放する道具を提供することを目指しているようです。製品の適応領域を広げる、つまり市場を広げるということは、市場にニーズ、とりわけ同社製品のように「見え方のわずらわしさ」を感じている人すべてとなるとそれぞれの細かなニーズに対応しなければなりません。スピード感をもって細やかなニーズに対応しつつ製品開発・販売するためにHOYAという大手企業から分社した同社の動きは軽快、クラウドファンディング型資金調達により5億円近い資金を集め、2024年1月には、毎年ラスベガスで開催されるコンシュマー・エレクトロニクス・ショウ(CES)にて優れた製品やサービスを表彰するOmdia Innovation Awards2024及びPhandroid – Best of CES 2024の二つの章を受賞したそうです。

最後に、同社の活動を紹介する東京新聞記事の冒頭部分を紹介しておきます。

「小さな企業であるヴィクシオン(東京都中央区)が開発したViXion01S(ヴィクシオンゼロワンエス)をかけた瞬間、近眼と老眼に乱視が加わり常にぼやけ気味だった視野が一変した。」

「見え方のわずらわしさ」を感じている人の数は、日本国内だけでもかなりの数と推測できますが、世界全体となれば・・・「億人」の単位になりそうです。「視る力」を補うことは人の生活を大きく変えることになります。小さな企業が多くの人々の生活を豊かにすることに資する、それもスピード感をもって。同社の益々のご活躍を祈念しております。(AS)
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2024年10月7日月曜日

株式会社CULTA

挑戦すべきフロンティアは「食」にあり

農作物の高速品種改良で気候変動を克服
 東京大学発の農業スタートアップ、株式会社CALTA(創業:2021年、本社:東京、以下同社)が挑む新天地は、同社が有する高速育種技術により出来高も品質も気候変動に左右されない農業を構築することだそうです。
 これまでの農業は、その土地と気候にあう作物を作ることでしたが、気候の温暖化により収穫量や品質に影響が出るようになっているのは、最近のメディアでも報道されるようになっています。この課題を解決するためには、同社は農業先端技術だけでなく農家と消費者を結ぶ線とその広がりによる面をも考慮にいれて活動しているようです。
  同社が現在注力している「イチゴ」ですが、通常10年かかるなか、同社はその高速育種技術により僅か2年で、輸出に適した新品種を開発、長距離輸送でも実が崩れない棚持ち度合いや味など、従来品種に比べ、大幅に優れた品種を生み出したとのこと。元来日本のイチゴは世界的にも高いブランド力を誇っていることもあり、同社は栽培地の気候に合うように自社開発した新種のイチゴをマレーシアで自社生産に踏み切ったことから早速隣国シンガポールから協業依頼があったそうです。同社は、今後、APAC各国、更には米州や欧州・アフリカでの展開を考えているとのこと。
 協業にも様々な形があると思いますが、同社の考える農家と消費者を繋ぐというEnd-to-Endのサプライチェーンを前提とした大きな絵図においては、地球上の様々な地域を面でとらえて、それぞれの地域に適した作物を消費者に届ける仕組みづくりも必要となると思います。その大きな展望の中でそのコアとなる同社の高速育種技術とそれによって生み出される新品種の作物は知的財産としてしっかりと保護されていることは必須条件でしょう。着実に、しかし高速で展開されている同社の農業変革活動に敬意を表すると共に益々の発展を祈念しております。(AS)
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