2024年5月18日土曜日

株式会社百森

魅力一杯の林業

山と人が共にある社会づくり
 兵庫県と鳥取県に接する位置にある岡山県西粟倉村、なだらかな多くの山に囲まれ一時は「消滅可能性」集落と言われた小さな山村、株式会社百森(創業:2017年、本社岡山県西粟倉村、以下同社)はそこにあります。
 都会から移住した若者によって設立された同社の代表者は東京都出身のITベンチャー企業に携わっていたそうで(出典:2024年5月16日東京新聞)、起業の発端は、村が2008年に掲げた「百年の森林構想」に基づき村が企画した企業スクールに参加したことが切っ掛けだそうです(出典:同上)。
 今は未だ従業員10名(2名のパートタイムを含む)と小規模ながら多面的な活動をされているようです。同社ウェブサイトからその活動ぶりを覗いてみると、先ず2600haを超える山林の調査・管理、森に触れる体験をするなどの様々な山林活用、森林管理業務管理システムのくみ上げとツールの販売、MFA(メディック・ファーストエイド)救急医療の訓練プログラム、地域企業や自治体が取り組む温室効果ガス排出量のJクレジット化を調査から申請までサポートする「ヤマカチ」と称するサービス、そして書店開業・運営と、とても僅か10名でよくここまでと感じるほど幅広く事業展開をしつつあるようです。
 これら何れの事業も、村の93%が森林で覆われている西粟倉村の森林の調査管理請負業務を軸として、村の「百年森林構想」を実現することにあるようです。東京新聞によれば、村が2008年にこの構想を掲げて以来、構想に賛同・共感した人々が集まり入り、同社を含めて既に50社を超える新規事業が展開されているとのこと。未来を見据えて大きなビジョンを掲げる村の施策も素晴らしいことですが、それに呼応するように村外から集まり新たな事業を立ち上げる人々が沢山いるということは本当に心強いことです。森林を維持管理し、その貴重な資源が次世代、次々世代へと受け継がれていくような社会づくりは、日本の未来を支える重要な仕事だと思います。村の発展と共に同社の益々のご活躍を祈ります。(AS)

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2024年5月13日月曜日

Planet Savers 株式会社

次世代に美しい地球を残す

二酸化炭素を回収する技術
 気候変動による地球温暖化が深刻になりつつある現代、その温暖化を加速化させる主たる原因として挙げられる温室効果ガス、とりわけCO₂吸着量を(二酸化炭素)を如何に削減するかが、毎日のように報道されています。CO₂を排出させない、あるいは排出量を大幅に削減することは重要な対策ですが、一方でなかなか減少しないどころか大気中のCO₂が増え続けている現実を踏まえたときに大気中のCO₂を直接回収(DAC:Direct Air Capture)する方法も世界中の多くの機関で研究・開発がなされているようです。
 日本におけるDAC分野の先進企業Planet Savers株式会社(創業:2023年、本社:東京、以下同社)は、現時点で$1000/t-CO₂近いと言われる回収コストを$100以下にする高性能低コストのDACシステムを開発中とのこと。
 同社の目指すDACシステムは、欧米企業と異なり「無機多孔質材料であるゼオライトをベースとした革新的な吸着剤を用いて大気中からCO₂を回収するDAC装置」にあるそうです。この技術により、①CO₂吸着量を増量、②CO₂脱離エネルギーを減少、③維持管理費を少なく、④建設費を減らす、という4つを実現できるとします。回収したCO₂は、濃縮して地中に埋めて隔離したり、水素と混ぜて合成燃料の原料としたり、あるいは「トマトの温室栽培での活用や、コンクリートに取り込んで固定化することを考えている」(2024年5月2日付東京新聞)そうです。
 2023年時点での世界におけるCO₂排出量は大よそ37Gトン(出典:Statista, G: 量の単位Gigaの略で10億を表す)と言われており、同社は、2050年までに1GトンのCO₂を回収することをヴィジョンに掲げています。同社活動には環境省をはじめ多くの大手企業が支援をしているようです。同社の益々のご活躍を祈念しています。(AS)

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2024年5月2日木曜日

セレンディクス株式会社

 家の概念が変わる!

世界最先端の住宅を普通乗用車並みの価格と納期で実現
 近年、世界的に3Dプリンターでつくる住宅が登場していますが、日本初の3Dプリンターによる専業住宅メーカ、セレンディクス株式会社(本社:兵庫県、創業:2018年、以下同社)が2022年3月に手掛けた、最初の3D住宅”Sphere”は、23時間12分という驚異的に短い工期を実現しています。これは当然のことながら建設時のエネルギー削減につながります。
 同社ウェブブサイトによると、「当社は、単一素材に、耐熱性、耐震性、耐久性などの複合技術を詰め込める世界最先端のディジタルデータ開発を行っています。建設用ロボットプリンターを用いた生産方式で大幅な建設コストの削減を実現するとともに、出力された家は、今までにないデザインと機能性を提供します。」とのこと。近年の環境にやさしい建材の登場により同社が作る3D住宅の環境負荷は一層低減されることとなります。
 気になる価格ですが、同社製最先端3D住宅は普通乗用車一台分相当だとのことで、その工期も数日ということです。土地さえ確保できていれば家自体の購入は、正に車を購入する手軽さであることに驚きを禁じえません。
 創業から僅か4年足らずで日本における最初の3Dプリンター住宅を実現し、その後も国内販売実績を積み上げている同社は、今年(2024年)2月にウクライナ復興住宅の建設を3Dプリンター技術で支援することを発表しており、創業当初からのスピード感ある事業展開にはかなりの加速度がついているようです。上述の日本発の3D住宅”Shere”実現までの協力法人数は日本、米国、オランダ、中国の4カ国を中心とし80を超えるそうです。多国籍で多くの協力者をまとめ上げる同社の力は相当なものと拝見しました。同社の登場は、”家”というものの概念を変えるだけではなく、世界に散在する知を結び付け新たな知を創造し、社会を変える力に繋がるのではないかという力強さを感じます。同社の益々の発展を祈っております。(AS)

2024年4月20日土曜日

株式会社MizLinx(ミズリンクス)

 健全な海洋活動を支援し持続可能な未来へ

海の課題を可視化する
 我々が住む地球上で様々なものや事象が急速に可視化されつつある現代、その表面積の7割を占める海については未だ分からないことだらけという現実があります。その「海を科学的に解明することを通じて、海洋と人類の共生に貢献し、持続可能な未来を実現することを目的」に2021年、慶應義塾大学大学院在学中の学生が立ち上げたのが株式会社MizLinx(本社:東京、以下同社)です。
  同社ウェブサイトに記述される事業内容には「海洋観測システムの開発・販売/海洋データ分析支援/海洋コンサルティング/フィールドロボット開発」とあります。その中で既に商用中のMizLinx Monitorは従来機器の価格を大きく下回る価格でオーダーメイドにも対応、その機能は、高画質映像・画像、水温、溶存酸素、塩分、ph、濁度、クロロフィル、流向・流速などのデータを取得できるそうです。既に商用中のMizLinxは、福島県いわき市、静岡県沼津市、香川県東かがわ市などの養殖場でモニタリング・データ取集に供しているそうです。とりわけ沼津市における海上養殖場ではマアジの大量死に繋がった貧酸素水塊の移動を分析しマアジの大量死防止策に繋げる取り組みを推進中だそうです(PRTIMESより)。更に同社は、国内水産業のみならず海外、特に東南アジアにも活動を広げつつあるようです。
  水産業に製品・サービスを提供するのみならず、水産業の課題解決に興味を持つ研究受託の仕事も多いそうですが、同社の視線はその更に先を見据えて、ゆくゆくは気候変動に対するアプローチや海底探査をも視野に入れているそうです。  遠くの大きな目標を見据えつつ足元の課題を科学的アプローチで解決支援する若い創業者の着実な歩みは、「持続可能な未来」構築への大きな貢献につながると思います。同社の益々のご活躍を祈念しています。(AS)

2024年4月8日月曜日

株式会社ヘラルボニー

異彩を、放て。
「障害のある人」という既成概念を超えて「異彩」を世に放ち社会を変える挑戦
 株式会社ヘラルボニー(本社:岩手県、以下同社)のウェブサイトを拝見していて強く心に響くものを感じます。同社の双子の創業者で現在も共同CEOで活躍されているお二人は、「2018年7月、『自閉症の兄が幸せになる社会を、人生をかけて実現したい』という一心でヘラルボニーを設立しました」と述べておられます。
 人は皆それぞれ異なる能力、才能を持っていることは言うまでもありません。障害を有する人も同じです。同社はそれぞれの人々の持つ個性的な才能を「異彩」と名付けています。しかし、これまでは知的障害のある人の「異彩」を世に放つ手法も型にはまったものが多く、あまり大きな広がりになっていなかったように思います。
 同社は、障害を有する人の「異彩」を健常者と同じ位置づけでビジネスとして取り扱うことに着目、同社立ち上げから6年足らずですが、現在では幾つもの大手企業と提携しているばかりか今や世界でも注目され大きく羽ばたきつつあるようです。
 同社ウェブサイトの頁を繰っていくと奇麗な絵や図柄を取り入れたポーチ、クッション、ネクタイ、ビール瓶のラベル、バッグ、シャツやコートなどの衣料品等など、素敵な柄の品々が目に飛び込んできます。「Diversity & Inclusion」を耳にするようになって久しいですが、言うに易く行うに難い言葉です。それをビジネスを通じて確実に実証している会社、それが株式会社ヘラルボニーとお見受けしました。同社の益々のご活躍とご発展を祈念しております。(AS)
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2024年3月25日月曜日

株式会社東京・森と市庭

 木育と林業再生

もっと広がれ「木育」活動!
 株式会社東京・森と市庭(2013年創業、本社:東京、以下同社)は、林業再生へ向けて木材利用の新たな可能性を探ってきたそうです。同社は、社名の通り東京の豊富な森林資源、奥多摩地域に育つ杉や檜を建材や遊具として製材・加工を手掛けています。
 林野庁データによると、1950年代半には90%以上の自給率を誇っていた我が国の木材自給率も安価な輸入材への依存度が徐々に高まり2000年頃には20%を切るところまで落ち込みました。その後少しずつ回復し、2022年には自給率40%位のところまで戻してきてはいます。しかし、森林資源は間伐、育成と管理、伐採、植樹という長年にわたるプロセスを経て林業として生かされるものですので、長期間放置された森林資源を生かし林業として再生するには、並大抵ではないほどの努力が必要となります。
 同社は、創業以来様々な努力を重ねる中で単に森林資源を採取・加工して販売するだけではなく、遊具や学び舎を通じて子供たちに木材の持つ柔らかさや自然素材としての豊かさに触れてもらうことを大切にしているようです。このことはとても大切で、子供のころから自然や木材に触れ親しみ育まれた感覚は大人になっても変わらず体に浸み込んでいる筈で、林業の大切さをも併せて理解している筈です。
 この文章を書いている2024年時点では、一ドル150円前後の円安、又安価な木材供給源の一つであった発展途上国の人件費も上昇してきていることもあり、日本の林業再生の好機でもあります。折々、同社所有の森林を解放して自然に対する子供の感性を育みつつ、国産の木材、木製遊具、木製おもちゃなどの製品を手掛ける同社の事業はとても貴重であり、同様の活動が全国に広がるとよいと思います。 同社の益々の活躍を祈念しています。(AS)


2024年3月18日月曜日

Northvolt

世界で最も環境にやさしい電池をつくる

欧州からの反撃  欧州ではEUの厳しい環境規制により自動車メーカーはEVへの移行を強く迫られており、その要となるバッテリーを経済安全保障の観点からもEU域内で調達するように促されています。これに呼応するように、スウェーデンに本社を置くNorthvolt社(2016年創業、以下同社)は、2017年に大胆かつシンプルな計画を発表しました。曰く、「世界で最も環境に優しいバッテリーセルを開発し、バッテリーの欧州供給を確立することで、エネルギーの未来を可能にする」というものです。
 爾来同社は、研究開発、製造施設、循環型製造工場への投資など積極的に実施し、製品開発分野ではリチウム電池に加えて時代の最先端を行くナトリウムイオン電池の開発に成功、又「電池から電池をつくる」という言葉に示されるように古い電池を新しい電池の原料に変える電池のリサイクルプログラムを稼働させているそうです。
 同社の革新的な製造の精神を記す同社の文章を次に引用してみます。「革命の原動力:Northvoltでは、化石燃料への依存をなくすという人類最大の課題を定義する産業革命のための持続可能な製造基盤を開発しています。ひとつ屋根の下Northvoltは、幅広いバッテリーサプライチェーン活動を社内で行うことで、バッテリーメーカーであることの意味を書き直しました。この垂直統合的アプローチにより、私たちは世界で最も持続可能なバッテリーの製造を目指しています。製造だけでなく、私たちはソフトウェアとデジタル・コンピタンスにも深く投資してきました。そして、より良く、よりスマートで、よりクリーンなバッテリーソリューションを構築するために、私たちの活動全体にこれらを展開しています。」(英文和訳:筆者)とあります。フェアトレードという言葉があるように、これまで製品原料から完成品に至るまでのサプライチェーンを辿る中で不公正・不公平な取引も内在していたことが挙げられ、これを正すべくフェアトレードが世界的で叫ばれるようになりました。この点においてもこの「革命の原動力」以下の文章には同社の強く堅い意志を感じます。
 最後に、同社ウェブサイトのトップページに記載されている同社の2030年達成目標値「石炭火力発電のセルと比較してCO2を90%削減」「リチウムイオン電池設置容量目標」をご紹介して本稿を閉めたいと思います。地球に優しく持続可能な製品づくりを通じて持続可能な社会づくりにも貢献するという強い意志を感じさせてくれる同社の益々のご活躍を期待しています。
(AS)
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